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相続不動産の共有の真実〜共有持分を甘く見てはいけない理由

1.まずは共有持分のイメージ根本的に変えよう!

1.1.共有持分のよくある事例〜私道

不動産を相続で取得する時、相続人が複数いる場合は共有持分として不動産を取得することになります。共有持分とは、不動産を分割することなく取得できる権利で、その持分割合に関係なく不動産全体を使用できる権利です。

よくある例としては「建築基準法42条2項道路」があげられます。42条2項道路とは未だ公道とはなっていない私有地を現実の利用形態が道路となっているため、建築基準法によって道路と認められたものです。

一般的にこの42条2項道路のことを「私道」といいます。とはいえ、どれだけ現実の利用形態が道路であってもその土地は私有地であり、その土地の所有者は登記簿上複数の土地利用者の共有持分として表示されることとなります。もちろん共有持分とはいえ民法上の所有権ですから、その持分単独で譲渡(売買)は可能です。

42条2項道路の持分を持っているとどのような効果がるのか?先程申し上げた通り、現実の利用形態は道路ですので、普通に徒歩、自転車、自動車等で通行する分には持分がなくてもほとんど問題がありません。持分がなければ通行もできないとなると、郵便や宅急便を届けることもできません。

実際に問題が生じるのはその道路に接道している土地を売買する時です。例えば土地を購入した後、新しい建物を建てるためには場合によっては上水道管、下水道管、ガス管等をその土地に引き込むため、その私道を掘削する時です。掘削時は道路にかなり大きな穴をあけることが通常です。

もしこの時その私道の持分を持っていなければ、他人の所有物を一時的には損壊することになってしまいます。この場合、その私道の共有持分権者全員から掘削をする同意を得ることになります。一人でもその同意を得られないと、せっかく買った土地に建物を建てようとして水道管を引こうとしても引き込めないということになってしまいます。

1.2.共有持分は強力な権利

ここまで、私道の持分のことを少し詳しくご説明しましたが、一番申し上げたかったことは共有持分という権利は思っている以上に強力な権利だということです。私道の例で言えば、たかだか一時的に必要な限度での穴をあけるだけでも、その土地の共有持分権者全員の同意が必要です。

当然のこととしてその土地の売買等の処分行為をする場合も全員の同意を得なければならないことになります。私道の場合は共有持分権者が数十人にのぼることもありますし、私が扱った相続不動産では十数人の共有持分権者がいたこともありました。

こういった場合、掘削の同意や売買による譲渡をしようとした場合、どんなことが起こりそうか想像つきますよね。そこで、「共有持分」という言葉を聞いた時のイメージを180度転換してください。「共有」という言葉から皆さんのイメージでどことなく「みんなで仲良く」というイメージがあるかもしれませんが、そうではなく、絶対不可侵の強大な権力者が、核抑止力さながらの均衡状態をかろうじて保っている危ない関係とイメージしてください。

2.遺産分割不調の悲劇

共有持分のイメージは変わりましたでしょうか。共有持分というのは皆様が思っている以上に強力な権利です。実際に私が現在取り扱っている案件に以下のようなものがあります。

2.1.超一等地の事例

私に最初に相談が来たのは都内某所の約50坪の土地です。その土地の所有者は2人でそれぞれ2分の1ずつの共有持分を持っている土地でした。その一方の当事者(以下甲とします。)からその2分の1の持分を買い取ってほしいとの依頼でした。

その物件概要書に添付された地図をよく見てみると私も何度も通りかかったことのある、本当の都心部の土地で、周囲は高層ビルが林立する超1等地でした。その50坪の土地には築数十年の木造平屋の建物が建っていて、その建物も経年劣化でもはやお化け屋敷のような様相です。

高層ビルの建った周りの環境からみるとそこだけ時が止まったような印象を与える程のインパクトですので、通りかかっただけでその印象が嫌でも飛び込んできます。検討を開始するにあたりその物件の資料を読み込んでいくと、この物件は直近の相続で所有者が2人となったことが分かりました。

ただ、1点不可解な点がありました。建物自体は築60年以上も経っているのに土地も建物も、今回の相続登記で元の所有者から数えると2回目の所有権移転となっていることです。更に資料を読み込んでいくと、「相続関係図」なる資料がでてきました。相続関係図の頂点には、曾祖父、曾祖母がおり、そこから枝分かれして子供たちが鼠算式に増えていくピラミッドのような図です。

この図と登記簿謄本から読み取れることは、一度目の所有権移転では3人が共有で相続し、その後の相続では遺産分割が不調に終わり、その後相続人が鼠算式に増え、不調のまま数十年の時を経て、その間2人の相続人以外は全て亡くなり、直近になって初めて相続登記が完了したということです。たかだか数枚の物件資料ですが、この数十年の血みどろの争いが読み取れる資料です。

2.2. 収益物件(1棟レジ)の共有での相続

これも実際にあった事例です。総戸数30戸の賃貸マンションを相続人5人の共有で相続したケースです。遺産分割の内容は極めてシンプルで、賃貸マンションからあがる賃料収入は毎月平等に分配、毎月かかる経費や固定資産税日等の税金、突発的な修繕費用等は平等に負担という内容です。

この場合、相続人の中から長男、長女等1人が代表となり、管理会社等からの賃料の受け取り、経費の支払いを行うこととなります。この代表となる相続人は、相続が起きる前は親の介護を引き受けたり、家族で問題が起きたときはリーダシップを取って解決にあたっていたりする場合が多く、基本的に責任感の強い人です。

受け取った賃料を他の相続人分配したり、かかった経費を集計して請求したりする業務をまじめにこなしていきます。ただ、この代表者の業務はこれだけにとどまりません。賃貸マンションのオーナーが行う業務はこれだけではないからです。

不動産は生き物ですから、日々いろんな問題が起こります。大規模な漏水や原因不明の電気トラブル、管理会社に任せてはいても、場合によってはオーナー自らが現場に駆け付けなければならい場合があります。最近では高齢者の孤独死も増えているので、遺体の第一発見者となり、警察を呼んで現場検証の立ち合い等をすることもあります。

とても賃料を平等に分配されたら合わないくらいの業務があります。さらに経費の平等負担も時の経過とともに困った事態に陥ります。複数の相続人がいる場合、それぞれの相続人にそれぞれの人生があり、結婚、離婚、健康を害する、勤めていた会社をクビになる、自営業者であれば会社の倒産等、相続時には全員が健康でバリバリ働いていても、生きている以上は様々なことが起こります。

そういったことが起こった時、1人の相続人が修繕費等の分担金を払えなくなった場合、それを1度でも認めてしまうと経験的にはほぼ未来永劫払わないという状況に陥りがちです。年を追うごとに払わない人が増えていき、代表者の負担は増えていくばかりです。そこで収入の分配金を止めようものなら、元々お金がなくて経費を払えない相続人ですから、分配金を減額されたとたん激怒して、対面交渉ではらちが明かなくなり、弁護士を通して内容証明で会話するという事態に陥ります。

2.3.複数の不動産を相続人が1人1物件という形で相続した事例

不動産の価格設定は非常に難しいです。一物四価という言葉はご存じですか。取引実勢価格、公示地価、相続税路線価、固定資産税評価額と不動産の価格設定の時に参考とする基準が4つもあるということです。取引実勢価格は文字通り取引されている価格で、ネット上の不動産情報の検索や、不動産業者からのヒアリングで知りうる価格です。

ただ、この取引実勢価格も買主がエンドユーザーか不動産業者かによって大きく価格に開きがあるし、その時点での市況感に大きく左右される価格です。公示地価は国土交通省が3月中旬頃発表する毎年1月1日時点の土地評価で、土地取引の参考とされる価格です。この公示地価は比較的取引実勢価格に近い価格です。

そして相続税路線価。これは国税庁が8月ごろ発表する価格で、毎年1月1日時点での相続税の課税の基準となる価格です。最後に固定資産税評価額。これは東京都と全市町村が固定資産税課税の基準となる価格です。基準となる価格だけでもこれだけありますが、これに加えて土地の形、接道している道路の状態、駅からの距離等、価格決定に影響を及ぼす個別的要因が無数にあります。

同じエリア内の土地であってもその状況により倍くらいの価格差が開くことはいくらでもあります。

例えば、相続人が3人、不動産が3つあったとしましょう。その3つの不動産を1人1つ相続したケースです。ここまでの一物四価の件で詳しく説明したようにその3つの不動産が同じエリアにあり、更に広さも同じと仮定したとしても、それぞれの不動産の価格には大きな差がある場合が十分想定されます。

現在私が受けている案件に、この差額を現金で精算する為、不動産査定書を作成するという業務があります。私の依頼人は相手方が相続する予定の不動産価値が相手方の評価では価値が低く、私の依頼人に対して現金を請求してきているという事例です。

私への依頼内容は、相手方の主張とは逆に、依頼人側の不動産の価値の方は低く、相手方に一定の現金を請求できる根拠となるような査定書を書いて欲しいという内容です。先述のように、不動産はその立地条件により全く価値が変わってきます。また、その土地をどのように活用するかによって、いくらでも価値は変わります。

極限の事例は、地方のある土地を地方在住の兄の言われるがままに東京在住の弟が分割しての相続を任せていたら、その弟の土地は接道を奪われていたという事例です。地積はちょうど50%ずつですが、一方の土地は道路と接している部分が全くなく、道路と接していないとその土地には建物を建てられませんから、利用価値はゼロに近づきます。

 3.共有名義で相続するメリット

ここまでの説明でお分かりの通り、共有名義で相続するメリットは正直全くありません。兄弟間で仲が良いからとか安易に共有で相続すると、時の経過の中で様々に状況が変化し解決不能な泥沼にはまってしまいます。

ただ、共有名義の相続に1つだけメリットがあります。逆説的ですが問題解決を先送りできるというメリットです。兄弟間の仲が悪く、遺産分割で様々な問題点を解決できない場合でも、とりあえず相続する不動産に均等割りの持分を取得できるとなれば、その他の問題を棚上げしても全相続人は納得するケースが多いです。ひねくれた視点に思われるかもしれませんが、私が不動産登記簿を見て所有権移転の原因が相続でそれが共有での権利移転だった場合、90%は問題の先送りを疑います。

4.目指すべきゴール

相続という人生の出来事は非常に特殊な出来事です。通常人は生まれてから一定の教育を受けた後、労働をしながら賃金や所得を得て生活をしていくケースが大半を占める中、相続の特殊性は、自分の労働や能力に関係なくまた人生の前半にはあまり意識もしなかった財産が、突如転がりこんでくるというところにあります。

統計データあるわけではありませんが、宝くじにあたると人生が不幸になるという都市伝説が本当だとするならばそれと似たところがあると思います。親族間も一般社会と同じような社会関係ではありますが、血のつながりや過去の経緯を濃密に共有しているより深い社会関係です。

外面的には良好な関係を保っていても、それぞれの相続人の無意識層に様々な感情が眠っています。その眠っていた感情が相続をきっかけに爆発し、本人たちが予想もしなかった争いに発展していきます。

一方で日本の相続税法はほとんど日本国民にとっては重たい税金です。立法趣旨の根本には、財産を世襲的に相続していくのではなく、一つの世代で一度精算し、不動産にあっては流動化を促進し、社会を活性化していくという思想が隠れています。私の今住んでいる住宅街には、比較的古くから建っている戸建てで、土地は100坪以上あるものが複数あります。この100坪が次々と新築戸建ての3棟現場に変わっていっています。最寄り駅の乗降者数は、世帯数の増加により年々増えていっています。

結論は、できるだけ早い段階で売却して現金化し法定相続分に応じて分配することです。国の法制度が所有し続けることに重たい負荷をかけ、その負荷を難しい人間関係で共有する。それが相続不動産の共有です。

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